RAFIQ Magazine 12月号

 

今年、RAFIQでは、支援する難民の裁判を約20回、傍聴する機会がありました。本人尋問の時には、通訳を介して証言するため、3時間にも及ぶことがあります。言葉の通じない国で法廷に立つ心労は想像も付きません。それでも裁判を続けるのは、命の危険があり国に帰ることができないから。この人たちが裁判に年月を費やすことなく、一日も早く自立できる日が来ることを願います。
RAFIQのホームページに年次報告を掲載しました。
目次
1.コンゴ民主共和国難民に難民認定
2.寄稿 グローバル難民フォーラムに参加して
3.改正入管法の補完的保護が運用開始
4.難民の本人尋問を傍聴して
5.RAFIQ 1月・2月の予定

1.コンゴ民主共和国難民に難民認定

12月19日、RAFIQの支援するコンゴ民主共和国(DRC)の難民が難民認定されました。RAFIQでは4月に認定されたウガンダ難民に続き、今年2例目です。年末に一つ朗報を伝えることができました。認定までには4年かかりました。本人は多くの人にここまで支えられたことにとても感謝していました。
彼は、政治的な理由で迫害を受けた母国から逃れ、2019年に関西空港で難民認定を申請しました。その後、大阪入管に収容されていた時に、RAFIQは面会を開始し仮放免を支援しました。申請後2か月で難民不認定になり、審査請求(意義申し立て)をしていました。そして、2022年に難民審査参与員に対する口頭意見陳述があり、1年半後の今年12月19日に結果の告知があり、難民認定されました。
彼はこの4年間、仮放免の状態で、就労は認められておらず、1日1,600円の保護費で生活していました。保護費は、生活に困窮している難民認定申請者に対し、アジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)を通じて、外務省から給付されるものです。これでは、国に残してきた妻や子どもを支えることはできず、辛い思いをしてきました。
難民認定されても、すぐに安定した仕事に就くのは難しいため、自立に向けた支援は必要です。
12月20日にはDRCの大統領選挙があり、年内にも結果がわかると言われています。国内では選挙に関連した暴力や、一部地域での武装勢力と政府軍の衝突などが指摘され、治安は悪化の一途をたどっています。そのため、日本を含む国外に逃れる人が増えているとみられます。「コンゴ民主共和国大統領選挙」で検索すると、DRCの人権状況がうかがえる記事を見ることができます。

【参考】外務省 コンゴ民主共和国基礎データ

2.寄稿 グローバル難民フォーラムに参加して

2023年12月13日~15日に、スイス・ジュネーブにて、日本が共同議長国を務める「第2回グローバル難民フォーラム(GRF)」が開催されました。
GRFは、各国政府、国際機関、自治体、市民社会、民間セクター、難民当事者等が一堂に会する4年に一度の国際会議で、今年は168か国から4,200人以上が参加。日本からもなんみんフォーラム(FRJ)事務局を含む20人超の市民社会のアクターが参加、登壇しました。
会期中は、難民と受け入れコミュニティに対する支援・協力としての取り組みの成果や今後の計画が共有されました。その多くはプレッジ(宣言)として登録されており、新たなプレッジは1,600超に。
日本政府は、国内での取り組みについては、第三国定住難民の受け入れの継続、難民の留学生としての受け入れプログラムの継続と拡充、補完的保護対象者の認定と定住支援をプレッジ。日本からのプレッジは官民合わせて約40件に上り、4年前の約10倍となりました。
オープニングセッションに登壇した上川陽子外務大臣は、政府のプレッジの発表とともに、国際社会の平和と安定の確保に向け引き続き全力を尽くしていく決意を述べました。
共同議長国の任期は向こう4年。今回、以前にも増して日本の多様なセクターがプレッジに参加しており、共同の取り組みも多くあります。より効果的で持続可能な取り組みのためには、支援の輪を広げ、横の連携・協力を更に進めていく必要があります。
また、国際社会からは日本がグローバルなレベルで好事例を先導し、他の国や地域を巻き込むリーダーシップが期待されています。日本社会が一体となってそうした取り組みを進めていけるよう、FRJもコミットメントを続けていきます。
(なんみんフォーラム(FRJ)事務局 檜山怜美)

3.改正入管法の補完的保護が運用開始

6月9日に成立した改正入管法のうち、「補完的保護対象者の認定制度」が12月1日に施行されました。
出入国在留管理庁 補完的保護対象者の認定制度
また、今年3月に発表された「難民該当性判断の手引き」も12月1日に一部改訂されましたが、補完的保護対象者の詳細は明記されていません。
難民該当性判断の手引き
https://www.moj.go.jp/isa/cont...
実務上、大きく変わったことは、難民認定申請書と補完的保護申請書が一つになったことです。
難民・補完的保護対象者認定申請書
新しい申請書では、最初に難民か補完的保護対象者のどちらを申請するのか選択するようになっています。今月、RAFIQでは、難民認定申請の支援に使用しましたが、補完的保護対象者の詳細について記載がないため、記入の際、申請者への説明ができませんでした。
補完的保護は本来、難民に認定されなかったときの救済策としてあるはずですが、最初から本人に選択させる様式になっているのです。そして、難民認定されるはずの人が補完的保護対象者の認定を申請してしまうと、難民該当性の判断がされません。

また、補完的保護対象者はウクライナ避難民が想定されており、この運用が始まる前日の11月30日には、日本政府による「ウクライナ避難民であることの証明書」発行が終了しています。
出入国在留管理庁 ウクライナ避難民であることの証明書
補完的保護の対象が今後、ウクライナ以外の紛争国から逃れてきた人にも拡大されるのか注視していきたいと思います。
日本が進める補完的保護に関して、参考となる資料を3点ご紹介します。

【参考】難民研究フォーラム 補完的保護に関する国際社会の取り組み
難民支援協会 はじめて知る「補完的保護とは何か?」
名古屋難民支援室 改定入管法の一部施行にあたり、声明を公開しました 

4.難民の本人尋問を傍聴して

11月、大阪地方裁判所でRAFIQが支援する人が、難民不認定の取消しを国に求めた裁判の本人尋問が行われました。
法廷では、本人が北アフリカの出身国で受けた暴行や迫害の状況を具体的に語りました。原告・被告双方の代理人は、信ぴょう性を確認するため、同じことについて右か左かといったような細かいことまで何度も質問します。それでも冷静かつ詳細に答えることができていました。
この裁判の詳細はRAFIQ Magazine 10月号参照

裁判傍聴者の感想
「JRの車両トラブルのため、裁判所には15分ぐらい遅れて到着。
既に傍聴席はほぼ埋まり、静粛な熱気が。ご本人の身に及んだ危険・迫害についての質問が約3時間続き、もう4年も前の光景がまざまざと浮かび出す。ご本人は思い出したくない記憶であろうが、繰り返し、繰り返し・・・。
国側は証言の綻びを見つけ、ちょっとした誤謬から訴状内容の信頼性を全否定したいという考えなのか?難民問題については命が危険にさらされる可能性があれば守る!という判決を出してほしい。
難民の方が、日本で安心して暮らせるようになりますように。」(RAFIQ会員 Mさん)
「裁判は幾度か傍聴していますが、本人尋問は今回が初めてで、単調かつ形式的な対話のように感じました。
同じ事情確認を何度も双方から投げかける尋問には違和感も覚えました。勝訴に向けて効果的な質問の流れや、本人の不安解消などもあるのだと思いますが、3回練習したと聞き、あるべき姿なのか疑問が残りました。これからの難民裁判がどう変わっていくかも私の注目ポイントです。
今回の本人尋問はとても有意義な時間になりました。これからも時間の許す限り、裁判傍聴に参加したいと思います。」(RAFIQ会員 Hさん)

3.RAFIQ 1月・2月の予定

難民裁判の傍聴

今回は、アフリカから日本に逃れてきた人が難民不認定と在留特別許可不許可の取消しを求めている裁判です。裁判傍聴は誰でもできる難民支援です。

下記フォームから予約のうえ傍聴された方は、弁護士による説明会にも参加していただけます。 

日時:1月23日(火) 11:00~12:30 ※時間は説明会を含み、終了時刻は予定です。
場所:大阪地方裁判所(大阪市北区西天満2-1-10 )806号法廷 ※裁判後の説明会(約1時間)は法廷から場所を変えて行います。

難民初級講座「難民についてもっと知りたい」&ボランティア説明会

日本に逃れてきた難民の現状と課題を、支援の経験に基づき解説します。また、ボランティア説明会では、RAFIQの活動内容を具体例を挙げてご紹介します。受講された方にはRAFIQ編集のテキスト『もっと知ろう!もっと考えよう!難民のこと』をお送りします。
毎月第二土曜 次回1月13日(土) 

14:00~17:00 ※16:00からはボランティア説明会
オンライン(Zoom)で開催 要予約
参加費:2,000円(学生1,000円、RAFIQ会員1,000円)
※予約された方には開催の約1週間前に参加費の振込先をお知らせします。入金確認後にZoom ID等の詳細をお知らせします。

難民カフェ

毎月第三火曜の夜は、大阪市内の古民家カフェで、難民をテーマに語り合う交流会を開催しています。予約不要で、どなたでも参加できます。
日時:1月16日(火) 19:00~21:00 

場所:サロン・ド・アマント天人(大阪市北区中崎西1-7-26)
参加費(カレー・チャイ付き難民支援カンパ):1,500円

 難民支援にご協力をお願いします

RAFIQは皆さまからのご寄付で、日本に逃れてきた難民を支援しています。
下記の方法で、ご支援お願いします。
RAFIQに支援金を送る
オンライン寄付サイト Give One で「困窮する難民申請者への生活支援事業」に支援金を送る
https://giveone.net/supporter/project_display.html?project_id=20367
Give Oneでの寄付は税金控除の対象となります。
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RAFIQ Magazine
2024年 1月号  2024年1月25日発行
 
 発行:NPO法人RAFIQ  難民との共生ネットワーク

 ホームページ: http://rafiq.jp

 お問い合わせ:TEL・FAX:06-6335-4440
      rafiqtomodati@yahoo.co.jp
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