RAFIQ Magazine

2025年9月号

9月に入り、朝晩は少しずつ秋を感じられる涼しさも出てきました。

RAFIQは、9月から新年度を迎え、今年で活動23年目に入りました。
これまで活動を続けてこられたのは、みなさまの温かいご支援のおかげです。心より感謝申し上げます。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
目次
1.実施が始まっている「不法滞在者ゼロプラン」
2.寄稿 イエメンの紛争と人道状況
3.支援の現場から…入管に収容される難民申請者が増えています
4.RAFIQ 今後の予定

.実施が始まっている「不法滞在者ゼロプラン」

5月23日に出入国在留管理庁から「不法滞在者ゼロプラン」が発表されました。
「不法滞在者ゼロプラン」では 、難民認定申請時に「明らかに難民に該当しない」
と判断する案件を実質的に増やすことや、不法滞在(非正規滞在)の状態となっている難民認定申請者らの国費による強制送還数を「3年後に倍増」することなどを目標に掲げています。日本の難民認定制度にはさまざまな課題があり、本来であれば難民に認定されるべき人が認定されずに不法滞在となってしまう実態があります。その中での本計画実施は大きな問題です。
これに対し、RAFIQは6月11日に難民支援協会、名古屋難民支援室とともに再考を求める意見を発表しました。
また、日本弁護士連合会会長声明やアムネスティ・インターナショナル日本の法務大臣宛て公開書簡などでもゼロプランに反対する意見が公表されています。
このプランで問題にされたB案件(入管が申請書の記載内容等から難民ではないと判断した案件)の人は、どれくらいいるのでしょうか?2024年は全申請者の0.6%80人です。
RAFIQにもB案件の人から「難民不認定になって1か月で帰れと言われた。どうしたらいいか。」といった相談が寄せられています。実質的に不認定に対する審査請求ができなくなっています。
深刻なのは不法滞在状態の難民申請者です。2024年は748人です。この人たちが今、出身国に送還されようとしています。入管への月1回の出頭日に収容された難民もいます。その後、連絡が取れなくなり送還された可能性もあります。 
2025年1月1日時点での不法残留者数は74,863人ですが、ゼロプランでは、このうちの保護すべき難民をも保護せず、命の危険もある国に送還されてしまうことが危惧されます。
 
出入国在留管理庁
「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」について
令和6年における難民認定者数等について
本邦における不法残留者数について
 
難民支援協会
難民の送還につながる入管庁「ゼロプラン」に対して意見を発表しました


2.寄稿 イエメンの紛争と人道状況

                      関西学院大学教授 清水康子
イエメンはアラビア半島に位置する、人口約3,000万人の国です。イエメンは世界遺産を5箇所も有するほど、たいへん美しい国ですが、紛争や自然災害のために、世界最悪の人道危機の一つと言われています。
イエメンでは内戦が長年続いており、2015年以降、フーシー派と政府軍・サウジアラビアが主導する連合軍との間での紛争が激化しました。しかし、この紛争は二者対立という単純な構図ではなく、南部独立派、アルカイダ、イスラム国(ISIS)、部族勢力など多くのアクターが関わっています。そのため和平への試みは成功しませんでした。加えて、近年は、ガザ情勢の影響も受け、イエメンの紛争は、複雑かつ長期化しています。
長引く紛争は人々の生活に大きな影響を与えています。例えば、2015年以降、連合軍の空爆によって19,200人以上の市民が死傷したと報告されています1。また、2024年末付で51,000人以上が、国外に逃れ難民となり、480万人の人々が国内で避難を強いられています2。320万人の子供が学校に行けず、41,000人の子供が5歳未満で死亡しています。40%以上の医療施設が完全には機能せず、619万人の女性・女子がジェンダーに基づく暴力の危機にさらされています3
そして、イエメンの状況は日本にも無関係ではありません。例えば、日本在住のイエメン出身の難民は、2020年では11人でしたが、2024年には42人に増加しています2。首都圏だけでなく関西に暮らす人もおり、RAFIQでは、イエメン出身者への支援にも力を入れています。
 
出典:
1 Global Centre for the Responsibility to Protect. (2025, July). Yemen. 
2 UNHCR Data Finder – Refugee Statistics
https://www.unhcr.org/refugee-statistics/
3 OCHA(国連人道問題調整事務所)「Yemen Humanitarian Needs and Response Plan 2025」 https://www.unocha.org/publications/report/yemen/yemen-humanitarian-needs-and-response-plan-2025-january-2025
 
筆者が2014年にハッジャ県ハラドにある国内避難民キャンプを訪れた際の写真

 3.支援の現場から…入管に収容される難民申請者が増えています

2025年6月から、大阪出入国在留管理局(大阪入管)に収容される難民認定申請者が増えています。
RAFIQでは、以前は毎月1回の面会を行っていましたが、コロナ禍以降は要望があった時に限り、不定期で面会を続けています。
この1年間では、2024年8月には3名の方から連絡があり、面会を実施しました。全員が迫害の理由を持ち、支援対象として対応しました。その後も面会希望はありましたが、支援対象ではありませんでした。
ところが、2025年6月以降、状況が大きく変わってきました。6月:2名、7月:5名、8月:5名、9月に入ってもさらに面会希望の連絡があります。
これらの方々は、関西空港で入国を拒否され、空港で「難民です」「迫害があります」と訴えても、難民認定申請書すら渡されませんでした。実際に難民認定申請ができたのは、大阪入管に収容された後です。
しかし、収容者の急増により、RAFIQとしては対応できるだけの人数が足りず、面会体制を整えるのが難しくなっています。英語以外の言語の通訳ができる昼間のボランティアも少なく、通訳の体制にも限界があります。
収容されている難民の問題は、難民認定申請には「迫害の証明」が必要ですが、携帯電話やインターネットの使用が認められず証明する手段が限られていることです。
約1か月で「不認定」の通知が届くケースも多く、迅速な法的支援が求められています。
この傾向は今後も続くと予想されます。RAFIQでは、入管に収容されている難民申請者への支援を最優先に考え、迅速に対応できる体制づくりを検討中です。
 

 4.RAFIQ 今後の予定

 

難民裁判
裁判の傍聴で難民の置かれた状況を知ることは、誰にでもできる支援の一つです。10月と11月の裁判は、それぞれ難民認定申請時に入管で作成された自身の供述調書の開示を求めている個人情報不開示取消請求訴訟です。下記フォームから予約のうえ傍聴すると、担当弁護士による説明会にも参加できます。
※いずれも時間は裁判後の説明会(約1時間)を含み、終了時刻は予定です。説明会は大阪弁護士会館に移動して行います。
(1)
日時:10月3日(金)11:45~13:30 
場所:大阪地方裁判所(大阪市北区西天満2-1-10 )本館10階1007号法廷         

予約:https://forms.gle/GFTdptGCE5YLkQy28

(2)
日時:11月11日(火) 13:30~15:00 
場所:大阪地方裁判所(大阪市北区西天満2-1-10 )本館10階1010号法廷 

予約:https://forms.gle/DGixfXcB9F9hvdgu6

難民初級講座「難民についてもっと知りたい」&ボランティア説明会

日本の難民保護について、諸外国とも比較しながら20年超の支援実績に基づき解説します。講座後のボランティア説明会では、実際の支援について直近の事例からご紹介します。受講された方にはRAFIQ編集のテキスト『もっと知ろう!もっと考えよう! 難民のこと』をお送りします。

オンライン(Zoom)で開催 要予約

日時:毎月第二土曜 次回10月11日(土)14:00~17:00 ※16:00からはボランティア説明会

参加費:2,000円(学生1,000円、RAFIQ会員1,000円)
予約:http://rafiq.jp/learn.html#main_learn_01
※予約された方には開催の約1週間前に参加費の振込先をお知らせします。入金確認後にZoom のURL等を送ります。

難民カフェ
大阪市内の古民家カフェで難民をテーマに語り合う交流会を開催します。予約不要で、難民の問題に関心のある方ならどなたでも参加できます。
日時:毎月第三火曜  次回10月21日(火) 19:00~21:00 
場所:サロン・ド・アマント天人(大阪市北区中崎西1-7-26)
参加費(カレー・チャイ付き難民支援カンパ):1,500円  

日本に逃れてきた難民の支援にご協力を!
RAFIQは関西に暮らす難民を支援するボランティア団体です。
世界各地で紛争が多発し、RAFIQへの相談も増えています。
下記のいずれかの方法で、ご寄付をお願いします。
RAFIQに支援金を送る ワンコインからできる毎月寄付も選択できます!
オンライン寄付サイト Give One で「困窮する難民申請者への生活支援事業」に支援金を送る
https://giveone.net/supporter/project_display.html?project_id=20367
Give Oneでの寄付は税金控除の対象となります。
物品の寄付は「Amazonほしい物リスト」から
就労許可を得られていない難民認定申請者など特に困窮している人には毎月、米や日用品を送り届けています。今月はほしいものリストからのご寄付を活用することができました。ご協力いただいた方、ありがとうございました。
 

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2025年9月号  2025年9月25日発行
 
 発行:NPO法人RAFIQ  難民との共生ネットワーク

 ホームページ: http://rafiq.jp

 お問い合わせ:TEL・FAX:06-6335-4440
      rafiqtomodati@yahoo.co.jp
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