RAFIQ Magazine

2024年10月号

バングラデシュでは、8月に元軍人の親族に対する公務員優先枠の撤廃を求めた学生のデモが反政府運動へと発展し、治安部隊の弾圧により1,000人以上が亡くなったとされています。そして、逃亡中のハシナ前首相に逮捕状が出される事態になっています。
バングラデシュは、アジア最貧国の一つに位置づけられたこともあり、貧困層の児童婚や就学率の低下が問題になっています。一方、隣国ビルマ(ミャンマー)から避難した多くのロヒンギャ難民も受け入れています。
今号では、そんな背景を持つバングラデシュの現状を同国出身の方に報告してもらいます。
 
 
目次
1.難民不認定取消訴訟の控訴を断念
2.大阪入管の参観報告
3.知ってほしいバングラデシュの現状
4.寄稿「ワタシタチハニンゲンダ」上映会を開催
5.RAFIQ 今後の予定

.難民不認定取消訴訟の控訴を断念

RAFIQが支援するアフリカの男性が難民不認定と在留特別許可不許可の取消しとを求めていた裁判の判決が10月3日にあり、敗訴となりました。
彼が難民認定を申請したのは、2015年5月です。そして1回目の審査請求が棄却(不認定決定)とされたのは6年後の2021年の6月でした。同年7月に2回目の申請を行い、この年の11月には「難民不認定処分取消請求」訴訟を開始しました。その後、在留特別許可が不許可となったことを受け、その取消しも求めて追加提訴していました。
多くの方に傍聴していただいたことに感謝しています。
判決では、彼の友人等が危険を冒して収集した証拠の資料等をことごとく信ぴょう性がないとして採用しませんでした。また、難民申請した当時も非常に危険な国であったにもかかわらず、出身国情報についての判断がされず、判決は受け入れがたいものでした。難民の裁判が裁判官によって左右されることを改めて感じることにもなりました。
判決後、控訴期限までの2週間の間に彼と担当弁護士、協力弁護士2名も加え検討を重ねてきました。検討の結果、難民申請から10年にも及んでいること、この間に出身国はガザ同様に破壊された状態となったこと、親族などへの支援ができないことで心身の負担は大きく、本人がこれ以上時間がかかることへの不安が強いことから、その意思を尊重して控訴はしないこととなりました。
しかし、彼が命の危険もある国に送還されることなく一日も早く安全に暮らせるように今後も支援を続けていきます。
入管法の改正で6月から在留特別許可が申請できるようになったこと、彼の出身国が緊急避難措置の対象国になっていること、2023年12月からは補完的保護の申請もできるようになったことから、これらの可能性も探っていきます。彼の人生の大事な10年という月日が過ぎてしまったことを本当に残念に思います。               

2.大阪入管の参観報告

10月8日、アムネスティ・インターナショナル日本が大阪出入国在留管理局(大阪入管)の許可を得て、入管内の収容場を参観する機会が設けられました。RAFIQからの2名を含む計13名が参加しました。
無人の医務室や面会室、被収容者が体調の悪い時などに使用する休養室等を近くで見ることができました。しかし、居室や運動場は使用中との理由で見ることはできず、写真で説明を受けました。説明から、現在、被収容者は希望すれば医療が受けられ、健康診断や臨床心理士によるカウンセリングもあり、健康に配慮されていることはうかがえました。
見学後には事前に提出されていた質問に、職員5名から回答する時間が取られました。
収容場の定員200名に対し、この日の被収容者は52名とのことで、なぜ居室を見ることができないのか疑問でしたが、6名用の居室を現在は1~3名で利用しているとのことでした。質問には丁寧に回答されていましたが、家族で収容されている人の数など、「統計を取っていない」として回答を避ける場面は多くありました。
そして、入管法改正で被収容者の処遇がどう変わったかについては、「元々あったことを法律に載せた」「変える目的の法改正ではない」と答えられたことに驚きました。より人権に配慮した処遇に改善されることを期待していたのですが。
今でも被収容者が外部の医療機関を受診するとき、手錠と腰縄が使用されている現状はとても残念です。また、収容場では携帯電話の使用が認められず公衆電話しか使用できないため、家族からの電話を受けることもできないのです。各地の入管で異なるルールもあり、大阪では食品の差し入れが認められていません。紛争地域から逃れてきた人も収容されています。保護されるべき人でも犯罪者のように扱われてしまう日本の入管施設は、やはり変わるべきだと再認識する機会となりました。
 

 3.知ってほしいバングラデシュの現状

RAFIQが支援しているバングラデシュ出身の女性に、母国の現状を聞きました。
「今夏、ハシナ政権の元軍人家族への雇用割当政策(独立戦争の軍人家族を優先して公務員に採用)に対する大学生の抗議行動が、反政府運動へと発展しました。最終的に1,000人以上が命を落とし、8月5日、ハシナ首相は辞任し国外に逃亡しました。これは1971年の独立以来、最も多くの死者を出した騒乱となりました。
ハシナ首相の失脚後は、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が率いる暫定政府が樹立されました。暫定政府は目的を達成する手段に過ぎず、民主的なプロセスを経て新政府が樹立されるまで、多くの問題が発生する可能性があります。 
抗議活動の中心人物で、ユヌス内閣の一員となった26歳のナヒド・イスラム氏は、"私たちは命を犠牲にした人たちの血と引き換えに新しいバングラデシュを手に入れた。私たちは彼らのために生きている。言論の自由が戻ってきた。"と語りました。
ハシナ首相の辞任は、政敵の大量拘禁と殺害を含む15年間の独裁政治に幕を下ろすことになりました。彼女は、人権活動家であるミール・アフマド・ビン・カセム・アルマン氏失踪の責任者であり、失踪した多くの人は、軍諜報部の施設 "鏡の家"(アイナガル)に監禁されていました。この名前は、拘禁者が自分以外の誰とも会うことが許されていなかったことに由来しています。
ハシナ氏の逃亡後、賃金の引き上げを求める衣料品労働者らは、約100の工場を閉鎖に追い込み、前政権に対する怒りが広く、根強く残る中、緊張が高まっています。
しかし、ユヌス氏は、平和と法と秩序を回復し、汚職と戦い、新たな選挙に備えることが自身の主要任務であると宣言しました。
抗議運動の先頭に立った学生リーダー2人を含む彼の内閣は、裁判所や警察から選挙管理委員会に至るまで、バングラデシュの諸制度の徹底的な見直しと改革に目を向けています。このために、内閣は国連開発計画からの支援も求めています。」

 4.寄稿「ワタシタチハニンゲンダ」上映会を開催

NPO法人シーン事務局長
中村淑子
 
10月6日、「ワタシタチハニンゲンダ!」の上映会をRAFIQの協力を得て開催しました(後援:高槻市社会福祉協議会、於:高槻市立総合市民交流センタークロスパル高槻)。53名もの方が足を運んでくださり、上映後、髙賛侑(コウ・チャニュウ)監督のお話、そしてRAFIQ代表の田中さんからの報告がありました(写真)。
「ワタシタチハニンゲンダ!」は外国人学校に対する官製ヘイト、技能実習生、難民、入管の実態など外国人差別の本質にせまる映画です。2021年スリランカ国籍の女性ウイシュマ・サンダマリさん(33)が名古屋入管で死亡したのをきっかけに「入管法」(正式名称:出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)に疑問を持った人は多いと思います。
この上映会は、この法律が何故作られたのか、その歴史、また、この法律で管理・差別されてきた「在日外国人」に対する差別政策の全貌に関心を持ち、今現在ともに生きている「外国籍住民」の社会課題の解決に向けて、市民の方々の関心を高めることを目的としました。
髙監督は、この悪法をなくすために何ができるのか、自分に何ができるのかを考えてほしいと熱く語られていました。田中さんからは、今の難民の方々の裁判の状況、また、入管職員の入れ替わりも激しい(労働環境が問題?)という話を聞き、心が痛くなりました。参加者からは「直視できないようなひどい現実をこの国に住む市民として恥じています。外国人との真の共生を実現していかなくてはと思います。」「具体的に何か行動せねばと強く思いました。」等の感想が寄せられました。

 RAFIQ 今後の予定

難民裁判の傍聴

RAFIQは難民の裁判も支援しています。裁判傍聴はだれにでもできる難民支援の一つです。10月30日は、地裁で難民不認定の取消しが認められたものの、国が控訴したため高等裁判所で審理されることになった裁判です。
 
難民不認定取消訴訟 予約された方は傍聴後の説明会に参加できます。
    日時:10月30日(水) 10:30~12:00 
    ※弁護士による説明会(約1時間)を含み、終了時刻は予定です。
    場所:大阪高等裁判所(大阪市北区西天満2-1-10)8階 82号法廷
    ※説明会は場所を変えて行います。
 予約:https://forms.gle/oiFbckWSEaKvpG6a6

難民初級講座「難民についてもっと知りたい」&ボランティア説明会

講座では、20年を超える難民支援の経験をもとに、日本の難民保護について、現状と課題を解説します。講座後のボランティア説明会では、RAFIQの活動を最近の事例からご紹介します。受講された方にはRAFIQ編集のテキスト『もっと知ろう!もっと考えよう! 難民のこと』をお送りします。

オンライン(Zoom)で開催 要予約

日時:毎月第二土曜 次回11月9日(土)14:00~17:00 ※16:00からはボランティア説明会

参加費:2,000円(学生1,000円、RAFIQ会員1,000円)
予約:http://rafiq.jp/learn.html
※予約された方には開催の約1週間前に参加費の振込先をお知らせします。入金確認後にZoom のURL等を送ります。

難民カフェ

大阪市内の古民家カフェで、難民がテーマの交流会を開催します。予約不要で、どなたでも参加できます。

日時:毎月第三火曜 次回11月19日(火) 19:00~21:00 
場所:サロン・ド・アマント天人(大阪市北区中崎西1-7-26)
参加費(カレー・チャイ付き難民支援カンパ):1,500円  

日本に逃れてきた難民の支援にご協力を!
RAFIQは皆さまからのご寄付で、関西に暮らす難民を支援しています。
下記の方法で、ご支援お願いします。
RAFIQに支援金を送る
オンライン寄付サイト Give One で「困窮する難民申請者への生活支援事業」に支援金を送る
https://giveone.net/supporter/project_display.html?project_id=20367
Give Oneでの寄付は税金控除の対象となります。

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2024年 10月号  2024年10月25日発行
 
 発行:NPO法人RAFIQ  難民との共生ネットワーク

 ホームページ: http://rafiq.jp

 お問い合わせ:TEL・FAX:06-6335-4440
      rafiqtomodati@yahoo.co.jp
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